無料ブログはココログ

« 企業家はロバである | トップページ | 生活の喜び »

ベルリンの将来

ベルリンには将来性がある、と誰もが言う。

壁の崩壊の頃からそうだったけど、ドイツ人はもちろん外国人でも、ベルリンにはすごい潜在力があり成長できるのだとずっと考えてきた。そして、今のそう考え続けている。

しかし、それは本当だろうか? ここに住んで2年、いろいろ見て聞いて考えたけど、俺個人としての意見は、「当面は無理」だ。

実際、90年代初めの東西統一と首都移転に伴った経済ブーム、特に会社の本社機能移転や建設ラッシュといった効果は短期間で終わった。建設ブームに乗った西ドイツの個人や会社は手痛いダメージを受けて撤退し、せっかく移転してきた会社も去り、古来からあった工場群も閉鎖されていった。

東西統一の頃はJALが東京とベルリンの直行便を飛ばしたものの、需要が伸び悩んで1年ほどで中止。そして今では在ベルリン日系企業の数は5分の1くらいに減ってしまっている

ただ、ポジティブな面ももちろんある。

映画やMTVなどのテレビ局などのメディアや、見本市や国際会議や映画祭などのイベント、それに、音楽や美術といった芸術、それに観光分野では、ベルリンは確実に活況を呈している。ホテルの稼働率は上がっているし、芸術関係ではアトリエだけではなく美術品マーケットも伸びてきているし、観光客数ではベルリンは欧州第3位に入っており、街は常時観光客でごった返している。

こう見ると、街としての将来性がいかにもあるように見えるけど、この街に決定的に欠けているものがある。それは、「カネのにおい」だ。

物事の是非はともかく現実論として、今の現代社会はカネを中心に回っている。というよりも、ありあまるカネが世界中を行き来して、その力が世の中を突き動かす原動力になっている。だから、カネを引き付けられるか否かが、これも是非はともかく、「成長」のキードライバーだ。手法は何であってもいい。

ロンドンやパリ、ミラノ、アムステルダム、南ドイツの諸都市を歩くと、明らかにカネのにおいがする。街もピカピカで、人々のカネ回りがいいことが「空気」で感じられる。余剰のマネーが無数の個人や企業によって他の国や街に投資されてリターンが入り、さらに潤うといった循環があるわけだ。

カネはどこにあるのかというと、簡単だ。まず、お金持ちの人たちが住む場所。それに、銀行などの金融機関やファンドが集まるところだ。

お金持ちが住む場所はベルリンの南西部などにもある。でも、300万人都市の規模から考えると、そういったハイクラスの人たちは相対的に少ない。欧州では金持ちは大都市には住まず近郊の緑の多い場所に一軒屋を立てて住むものだが、西ドイツとは異なりベルリン近郊にはそういった場所はあっても少ない。また、金持ちであるクラス以上の人たちは気候温暖ないし風光明媚な土地に住んで必要なときだけ大都市に出るものだが、平原で寒いベルリンにはそういう需要はない。要するに、お金持ちが住み着かない場所なのだ。

金融機関はといえば、大国ドイツの首都にしては驚くほどに銀行本店が少ない。ベルリンにあるのは融資などの決定権がない単なる支店にすぎず、ドイツの銀行の本店はフランクフルト、ミュンヘン、そして西ドイツ全域に散らばっている。銀行のベルリン支店では口座を開くことくらいはできるけれど、大きなディールは本店にお伺いを立てなければ何もできない。

そして、今のようなカネ中心に回る弱肉強食の世が勢いを増して続く限りにおいては、ベルリンにお金持ちが集まってくることは構造上、考えにくい。

上述したようにエンターテインメントは多く、消費機会は多く、学問や芸術など「創造的作業」には適している。でも、肝心の「カネ」がベルリンに根を張らないから、投機的にカネが集まってはまた引き上げられて去っていくだけの「投資対象資産所在地」に過ぎなくなる。

西ドイツ人でベルリンに批判的な人は、若い人でも必ずと言っていいほど、「ベルリンには産業がないから将来がない」という論理を持ち出す。俺はこれを聞くたびに苦笑してしまう。だって、彼らの頭の中はまだ70年代のままなんだから

工場が林立し、多数の従業員を長期間雇い、工場団地ができ、コミュニティーができる。だから都市が栄える。それが戦後の西ドイツを支えた「経済の奇跡」だった。では、質問です。今は西暦何年でしょうか~? はい、答えは21世紀! その間、世の中の仕組みはガラリと変わった。そう、この論理は前世紀のものだった。残念賞! 

経済ブームの東欧が近いからベルリンは潜在力があると言う人も多い。この理屈にも、俺は賛成できない。

東欧がブームなのは、経済システムがまだ確立中で、コストが安いからだ。ポーランドやチェコの平均賃金は今でもドイツの3分の1以下だ。東欧に距離的に近くてコストの高い街に投資したい人なんて、誰がいるんだろうか!? それならベルリンを飛び越えて東欧へ行くよね!? それが証拠に、ポーランドなどに飛ぶ飛行機の数も、ベルリン発着よりもフランクフルト、ミュンヘン、ケルンなどの発着の方が数が多くて便利になっている。

もちろん、今のカネ万能の世の中がいつまでも続くとは思えない。近い将来、必ず反動がやってくると思う。そのときには、ベルリンはよいポジションにいると思う。

太陽光や風力発電などのクリーンエネルギーは、大国ではドイツとスペインが先行しているが、ドイツでは東独地域への設置が非常に多い。また、ベルリンの周りには大きな都市がないから、産業から出る空気中の有害物質NOxなどは、西ドイツのルール地帯やベネルクスなど都市が密集する地域に比べて低い。ドイツなので様々な環境規制も非常に強く守られている。また、有機農業も特に盛んな地域だ。

これからもこの不思議な街ベルリンを、よく観察しながら堪能しようと思う。

« 企業家はロバである | トップページ | 生活の喜び »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ベルリンの将来:

» 賢い金融機関の使い方 [賢い金融機関の使い方]
高金利な預金は今の時代とても大切だと思います。年金も破綻寸前の我が国で、自分の老後も含めて資産運用はとても大切です。そこで高金利な預金をし手元のあるお金を少しでも増やしていくことは必要なことです。高金利といえば定期預金などがあります。定期なら普通に預金するよりはさらに高金利が期待できますし、資産運用にはもってこいだと思います... [続きを読む]

« 企業家はロバである | トップページ | 生活の喜び »

2018年10月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31