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事務手続にみるニッポンの性善説

1年間に2度も海外引越をやると、日本でいろいろな事務手続を徹底的に体験させられる。

大手企業の日本人はなぜ杓子定規のようなサービスしか提供しないのかという疑問に以前はどうしても回答を見出せなかったのであるが、究極的には性善説的価値観があるからという自説に辿り着いた。

例えば料金の支払に納得できない理由がある場合、日本では議論したくても議論の余地さえない。大手会社でも苦情申し立てをする窓口や受付住所すらなく、電話対応や店の窓口では型にはまった回答を繰り返すばかり。書面主義の欧州では考えられないことだ。

議論がかみ合わないという以前に、こちらの主張が彼らのマニュアル外である場合、最初から耳を貸さない。顧客の見解を異論は異論として理解し、それを受けて自社の立場から筋道だてて相手が納得できるように反論するということすら、思い浮かばないようだ。

彼らに悪気はない。対応や言葉遣いは丁寧だ。単に、「ちゃんと議論する訓練を受けたことがない」からイメージできないだけだ。

裁判したら間違いなくこちらが勝ちますよと明言しても、「そう言われてもこちらでは何とも言えませんが、とにかく弊社では・・・」となる。

じゃあ顧客は欧米より不当に不利な立場に置かれているのか? 必ずしもそうではない。非常に日本的な解決法がある。こちらも負けじと一方的な論理で突き通せばいいだけだ。つまり、単純に支払いを止めればそれで済む。口座の差し押さえや裁判はしてこない。

そもそも電話で、「そういう場合、口座の差し押さえをしますか?」と質問すると、「いえ、そこまではやっておりません」と正直に答えてくる。涙が出るほど親切だよねえ~ 性善説とはこのことだ。

もちろん、料金を払わないとサービスが停止されたり、次回同じサービスを使うときに利用できないこともあるが、この2点を押さえしっかり了解した上で実行するなら構わない。相手の対応は粛々とマニュアルに沿った機械的なものであり、全ては透明な手続である。

ちゃんと議論して理論的に勝ったときと比べると、なんかいまいちすっきりしないハッピーエンド。しかし、このような煮え切らない終わり方に我慢ならないようでは、日本では長期間生活できない。

有名なNHK料金などは最も顕著な例だけど、要するに単純に払わなければそれで解決する事項は多い。テレビがないと一方的に主張してインターホンを切ればいい。払わない「顧客」に対する徴収側のマニュアル整備がされていないからだ。払わなくても、リスクは限りなくゼロに近い。

取立て側と議論する必要も、説得する必要も、法廷で争う必要もない。払ったら負けで取り返すことは不可能だけど、払わなかったらこっちの勝ち。実際、何の「サービス」を受けているわけでもないし、税金のような強制力もない。それなのに60%以上の家庭が自発的に払っているというのは驚異的事実! こんな実態は、海外ではまずないだろう。

自発的支払の対象が献金だというのなら、海外でも一般的だ。自分が納得できるポリシーで援助活動をしている団体に好きな金額を寄付するわけだから、あげる方ももらう方も気持ちがいい。素晴らしいお金の使い方だ。

しかし、NHK料金を「納得できないで、いやいや」払ったらどうだろう? そもそも、払う必要もないのに!! 生きたお金の使い方とは、とても思えない。

それにしても日本人は、きちんと互いに議論をしながら物事を詰めていくということが苦手な人が多い。いい事かもしれないが、「マニュアルでそう指示されていない限り」取れるものは顧客からちゃんと取ろうという意欲もゼロである。

自分の生活圏の狭いコミュニティーや会社外であうんの呼吸でわかりあえない相手が出てきた場合に議論や説明もまともにできないのでは、外国へ一歩でたら大変なことになる。弱い立場ならたかられてカモになるし、上の立場なら周りから煙たがられるだろう。

国内では気を使って神経をすり減らしつつ海外に出るといつのまにかKYになってしまっている「いい人」の日本人を見るたびに、俺は心が痛む。

海外で本当の意思疎通ができる日本人をどうやって育てていくのか、これからの大きな課題であろう。

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