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短期決戦で台湾へ

欧州はイースターホリデーが明けたところであるが、丸4日間滞在(初日は朝7時着、4日目は夜23時半発)という短期決戦で台湾へ行ってきた。

台湾に3ヶ月いたAちゃんをドイツへ連れて帰ってくるのが”目的”であったのだが、この短い間に台北だけではなく、台中の実家にも新幹線で日帰り訪問したりした。

さらに、わざわざ香港から来てくれた友人カップルを案内したり、この時期にしか台湾で会えない友人に会ったり、家族で食事会をしたり、さらにはドイツに持ち帰るいろんな購入品の免税手続をデパートをはしごしながら行ったり・・・

それでもせっかくだから、ちゃんといいホテルにも2箇所ほど泊まって2時間のスパをエンジョイしたり・・・

と、思い出せばまさに走馬灯のような4日間だったよ。

非常に凝縮されていて楽しかったけれど、時間ギリギリでAちゃんと帰りの飛行機に無事搭乗すると、「ああ、きつかった~」

今回の滞在で気に入ったものを3つだけご紹介!

① Quote Hotel

R0018920Aちゃんが予約してくれて今回初めて泊まった台北のデザインホテル。カラオケ屋さんを大改装して1年ちょっと前にオープンした。

ごちゃごちゃとした大通りに面しているので、外から見るとどこにあるかもわからないくらいだが、一歩中に入るとシックで素晴らしい。

R0018928 R0018911 R0018932 R0018941 部屋は広々していて、バスルームが入口から地続になっているなど斬新なデザイン。自分のiPodを差し込むとすぐに使えるステレオもあり、部屋の飲み物・食べ物はおろか、2Fロビーにある食べ物なども全て無料というのもいい。

R0018915R0018912従業員も親切で、チェックアウトしてタクシーを外で拾おうとしたら、ずっと10分くらも横に立って一緒に待ってくれた

これで朝食つき1部屋2名で16000円程度だから、かなりお得感あり!

② 欣葉101 (Shinyeh)

香港からの友人JさんとX君と一緒に行った、台湾の”高級”郷土料理店。本店には何度も行ったことがあり、そのおいしさにはいつも満足しているが、台湾101の85階に開店したこちらの店は、それを凌ぐ素晴らしさであった。

R0018961R0018963R0018999普段は予約がいつもいっぱいで敷居の高い場所であるが、Aちゃんの友人の友人がこのレストランに勤めていることから、金曜の夜にも関わらずなんとか席をゲット!

R0018985R0018989R0018990赤を中心としてまとめた雰囲気のよさ、台北の夜景の見晴らしさもさることながら、料理の味の絶品さは、もうすごいとしか言いようがない。このチキン、レバー煮、蟹チャーハン・・・ 

R0018993R0018995R0018992そして切干大根オムレツ、豚角煮、ジューシーな大粒牡蠣の卵とじ・・・・

どれもほっぺたが落ちるようなホームラン級ばかりで、全員が感動の嵐。

この立地とクオリティーで、4人でおなかいっぱい食べてお会計が全部でたったの12,000円というのは、なかなか信じられない。絶対お奨め!

③ ナンバープレート

R0019012R0019013これは番外編になるけれど、前回台湾に行ったときに面白発見したものを、今回晴れて証拠写真に収めたもの。

台湾は島であり中国とあまり良い仲ではないなので、欧州と違って自国ナンバー以外の車を見かけることはない。

しかし、欧州のように、ナンバープレートの前に12の星(EUのシンボル)と国の略称(ドイツなら”D”、フランスなら”F”など)を趣味でつけることがおしゃれと思われているのか、台湾ではかなり流行している。

アウディやBMWなどのドイツ車に乗っている人が”星マーク+D”をつけているのをよく見かけるが、日本車に乗っている人が”星マーク+J”をつけているというパターンも時々ある。

もちろん日本は欧州の国ではないから、”星マーク+J”というマークは欧州では実際には存在しないんだけど、台湾人の日本車愛好家は全然気にしていないようだ 笑

もう今年3度目の台湾。次に行くのは、きっと来年初めかな~

放射線ビジネス

福島の放射線放出が続いている現在、何でもビジネスのネタにしようという逞しきコンサルタントが売り込んでいるもの、それが”放射線コンサルティング”だ。

リーマン危機以来、会計コンサルからビジネスコンサル、人材コンサル、不動産コンサルに至るまで、ちまたに溢れ返っていたコンサルタント会社の多くは一気に食い扶持が減り、残った会社も人減らしで何とか生き延びる縮小均衡状況になっていた。これは欧州でも日本でもほとんど同じ傾向であった。

今回の震災と福島原発で日本はさらに需要が冷え込んで競争激化は避けられないが、一条の光が見えるとすれば、それこそが放射線ビジネスだ。

道義的には異論もあるだろうが、界隈に飯のネタが少ない中で彼らが非常に積極的に動いているという情報は、ビジネスを通じて多く入ってきている。

各国政府は日本からの輸入製品に関して税関で放射線検査をし、場合によっては証明書を出すよう要求してきており、また、海外の輸入業者や顧客からも検査や証明書の要請は強い。

航空便については、日本で荷を積む前に放射線検査を義務付けるような要請もあり、航空会社にフランスなど一部国から通達が出ている。対応は国や場合によってまちまちで、かつ目まぐるしく変わる。

日本は輸出大国であり、輸出企業にとってこれらのタイムリーな情報把握や書類・検査対応は不可欠だ。突如として、コンサル業界に一大マーケットが誕生したと言っていい。

欧州でも、日系取引が多いフォーワーダーにはコンサルが食らいついて、いろいろ提案している模様。業者さんにとってはえらい出費や手間が増えて大迷惑だけど、日本からの輸入品対応の特別扱いはもはや国際スタンダードなので、背に腹は代えられないのだろう。

ドイツ随一の港湾であるハンブルク税関は先週、日本からの船便輸入貨物に対する放射線検査基準を発表した。これによると、ランダム検査で放射性ヨウ素が1平方センチ当たり4ベクレルを超えると陸揚げ禁止措置となる。

欧州は原子爆弾所有国もあり原発推進国も多く、世界でもっとも放射線被害にうるさい場所では決してない。

それでも、3月21日~23日の東京で降った雨に含まれていた放射性ヨウ素が1平方センチ当たり3.2~3.6ベクレルであったという公式データを考えると、福島から250キロ離れた東京で貨物が雨に濡れただけでドイツでは陸揚げ禁止になるリスクがあるということになる。

この事態をどう捉えるかは人次第だけど、直接・間接いろいろな意味で、東京エリアの放射能汚染がかなり進行していることは間違いない。

ちなみに、欧州連合EU内(正確にはシェンゲン協定国間)は国境・通貨の壁もほぼなくなり、少なくとも経済的には統合されたように見えるけれども、放射線検査などの面では今のところ完全に各国政府のバラバラな対応に委ねられているようだ。関税基準や食品添加物などの輸入禁止基準は一律に定められているのに、これは興味深い。

欧州では、財政・経済の全ての分野において、まずは各国政府がバラバラな対応をし、何年も何十年も議論を重ねてようやく一本化していくという方法が取られてきたが、今回もきっとそうなってしまうのだろう。今のEUは外的な大きな危機に対応できる体制にはとてもなっていないことがまたもや露呈してしまったようである。

きっと、いや間違いなく、コンサルタントは今回の件で、EU当局や各国当局にも食い込んでいるはず。EUの首都ブリュッセルの周りに群れを成す何百というコンサル業者が馳せ参じ、競って提案を持ちかけるのだろう。欧州市民の経済負担は、また増えていく・・・

これが、現代のコンプラ社会における原発事故の”間接コスト”にはこのようなものまであるという、あまり愉快ではない事実である。

ウイーンの子育て事情

先週末は、仲良しの友達夫婦を訪ねて、ほぼ3年ぶりにウイーンで過ごした

どこも壮麗で格調高く美しく、文明の圧倒的な蓄積があり、図抜けてコスモポリタンなこの街は、ドイツ語圏の中では俺もAちゃんも一番住みたいと思っている場所である。

イタリア人とオーストリア人のカップルであるお二人には、1年半前にかわいい女の子Mちゃんが誕生! これまでとびきり活発で社交的だった二人の生活がどういう風に変わったのか、ぜひ知りたいという好奇心旺盛で出かけたのだ (^u^)

短い時間だったけど、ウイーンの子育て環境を垣間見ることができた。

この二人は、Mちゃんの他に、もうすぐナイジェリアから生後3ヶ月のアフリカ人の男の子を養子に迎えるという。だから乳母車も”買い替え時期”に入っており、一人用の乳母車は来週売りに出すとのこと。

まあ彼らは、家、車の中、別荘の中、イタリアの家(奥さんCさんの実家)など、合計5~6台の乳母車を持っているというというから、スケールが違う (;^_^

なだらかな丘陵に囲まれた人口160万人の小首都ウイーンは、仕事・交友・文化イベントを子育てと両立させやすい環境にあると思う。

Pict0052Pict0042市中心部には大きな公園もいくつかあり、おいしいケーキが食べられるカフェも併設されているブルグ公園では天気がよかったこともあり、広大な芝生では大勢の人がくつろいでいた。Cさんたちの子連れの友達とも待ち合わせ。

駐在員や外交官の多いウイーンではVienna Baby's Clubという会があり、妊娠中や赤ちゃんを抱える外国人夫婦が気軽に知り合えるようになっている。毎週活発に活動しており、英語による赤ちゃん救急法レクチャーなども講師を呼んで独自に企画しているというから、頼もしい。

水が大好きなMちゃんは噴水の水を触ろうとして乗り出し・・・

Pict0046気づくと、同じことをやっている子供がたくさんいた 笑

Pict0056夜に”偶然”初めて行った国立オペラ座(Staatsoper)は、ラッキーなめっけものに感動した。

公園に行きがてらCさんにとちらっと立ち寄っただけなのだが、ゲーテの有名な劇ファウストが上演されていて、20ユーロ(!)の席がまだ取れることを知り、その場でチケットをゲット。

Pict0062建物に入るやいなや、まばゆいばかりの金色にかがやく柱と、天井まで描かれた壁画に圧倒される。Cさんいわく、「舞台を見なくても来る価値がある」というのは、まさしく本当だ。

Pict0065Pict0064幕間の休憩時間にカクテルやおつまみをたしなむスペースでさえ、このきらびやかさ!

控えめなドレスやスーツの観客が多い中で、ジーンズ姿の自分が若干気になったが、こんなところに来るなんて知らなかったんだから、まあしょうがない・・・

Pict0068客席はこんな感じ。5人~6人ごとにコンパートメントのような部屋に入って観賞するようになっており、一番前列は100ユーロ以上するが後ろの席は安い。左半分が見えないが、舞台そのものからは非常に近いこともあり、立ち上がって身を乗り出せば迫力ある演技が至近で楽しめるのである。

Pict0074オペラをこれまでに一度しかなく、(ドイツ語圏の学校では必読書の)ファウストも読んだことがない門外漢の俺でもこれはすごいと思う歌声と、ウイーンフィルの奏でる生演奏には、本物のレベルの高さが伺えた。かなり通っている常連のCさんでも、今回の出来は特段に良かったと言って、心から満足そうだった。

ところでこの国立オペラ座、彼らの家から市電で5分の距離にある。

Cさんいわく、上演中にベビーシッターからMちゃんが泣いているというメッセージを受け、休憩時間に家に駆け戻って母乳を与え、オペラ座に舞い戻ってちゃんと続きに間に合ったことがあったという。何気なく話しているけど、これだけのレベルの高い文化イベントと子育てを両立できるのは、この街とこの母親の両方があってのことなのだろう。

家に戻るとMちゃんが下痢をしていたようで、いろいろあって寝付いたのは午前2時頃だったらしい。子育てはいろいろと大変だねえ~

Pict0084  Pict0089 Pict0095翌日はゆっくり起きて朝食を食べ、車で25分くらいの場所にある一面のブドウ畑へ。おいしいワインの産地でもあるらしく、Mちゃんとブドウ畑の中で戯れたり、タンポポを摘んだり、ベビーカーを押して散歩道をのんびり歩いたり、外でゆっくり座って土地の料理を食べたりした。パパとママに愛されているMちゃんのしぐさは、ほんとにかわいい~

25度近くの快晴と絶好の天気だったこともあるが、とっても気持ちがよかった。  

あっという間の”家庭生活”だった、2日間のウイーン。次来るときは彼らは(少なくとも)4人家族になっているのだろう。

また来るね~!

ポーランドを救った放射能対策

今また出張でポーランドに来ている。

もはや気心知れた仲であるポーランド拠点のトップA氏(50歳)と2人だけで夕食を共にする機会があったので、前から気になっていた話題を出してみた。それは、チェルノブイリ事故の対策についてだ。

25年前ソ連でチェルノブイリ事故が発生したことをポーランド政府が知ったのは、スウェーデンで高い放射線が計測された時のことだった。事故から既に3日間が経過していた。

事故を知ったポーランド政府はすぐに非常事態体制を敷き、1000万人の子供の9割にヨード錠剤を配って服用させた。事故から5日目のことだ

また、国内の牛乳の出荷を直ちに禁止し、輸入粉ミルクに切り替えた。

その結果ポーランドでは、大きな被害の出たウクライナやベラルーシと対極的に、子供の甲状腺ガンの発生が非常に少なかったという。

ヨード錠剤は甲状腺に限度いっぱいまで通常ヨードを吸収させる働きがあるので、あとから放射性ヨードが入ってきても甲状腺への吸収されることはない。子供や妊婦は放射線に敏感でどんどん体内に蓄積されていくので、もはや時間との競争であり、とにかく事故発生から早いうちににヨード剤を摂取することが重要であるという。

A氏はチェルノブイリの事故があったとき、初の子供が生まれる直前であった。妊娠中のA氏の奥さんも、配られたヨード剤を服用したという。

不幸中の幸いだったのは、奥さんが妊娠の本当の後期であり、子供への副作用があまりないと考えられたこと。妊娠中で安定期前の方は、かなりの副作用を覚悟で服用ことになったのだろうと思うと、胸が痛む。

チェルノブイリからポーランド国境までは500キロあり、俺の出張先のブロツワフまでなら1000キロ離れている。しかもこのとき、ポーランドは共産主義体制の末期であり、国も貧しく政情も混乱していた。

それにもかかわらず最悪の事態を最初から想定し、直ちにヨード剤を配布するなどして国難を無事回避したポーランド政府の英断には、頭の下がる思いである。

政府批判が大好きで基本的に皮肉屋さんのポーランド人でも、この政府の決断には感謝していることが、A氏の話し振りからも淡々と伝わってくる。

ちなみに、ポーランドの野生キノコに今含まれる放射線量は、今から2週間前(つまり3月末)の福島周辺の値に比べても4倍ほど高いのだという。

放射線は土壌に”吸収して蓄積される”ものだからデータは不思議でないにせよ、放射能汚染の長期的影響というのが如何に大きいものかがよくわかる。

関東地域の放射線量は約1週間前からかなりの増大傾向にあるので、増加し続ける放射線をドンドン吸収している今改めて日本のデータを取ったら、ポーランドのキノコ以上の数値になっている可能性が高い。しかも福島原発の放射能放出は全く止まる兆しはなく逆に悪化しつつあるようなので、放射能が出続ける今後数ヶ月~1年程度でどこまで”蓄積”されるかを考えると、末恐ろしいものがある。

チェルノブイリと福島は同レベルの事故で、東京は福島からたった250キロという至近距離。放射能はまだ全体の10%も放出されていないし、ドンドン拡大進行中。それなのに、東京以北に住む子供の大半がまだヨード剤すら服用していない、それどころか服用が必要という意識すらないということを考えると、将来相当に悲惨な事態になるであろうことが想像できる。

ベラルーシ・ウクライナの甲状腺ガンは多く、これまでに発病で亡くなった人も100万人近くいると言われる。日本の高い人口密度を考えると、東北・関東の放射能による今後20年以内の犠牲者も、恐らくこれ以上の人数にはなるのだろう。

福島原発事故の対策には残念ながら若干時遅しの感があるけれど、このポーランドの”成功体験”をきちんと把握して物心面の備えをしておくことは、今後の原発災害の際にきっと役に立つだろうと思う。

お上を信じる日本人、信じないドイツ人(下)

ドイツ人と日本人はよく性格が似ていると言われる。”まとまって組織立って行動する”という大きな意味ではまさしく似ているんだけど、その行動パターンの根本的な理由は相当違っているように思う。

俺が思うに、ドイツ人は「お上」というものを信用していない。個人主義で、自分や身近な家族以外のものを基本的に本当に信用することがない社会の延長で考えると、これ自体は何も驚くことではない。

政府が何かを決めて実施しても、それにドイツ人が従うかどうかは、決定に拘束力があるかどうか次第である。日本人のように、黙って政府に従うことは絶対にない。政府が何かを推奨しても、強制されない限り、自分にメリットがなければ実行することはないのだ。

逆に、ドイツ人が絶対に従うのは、規則や法律で明文化されている時である。だからドイツ人は、やりたくないことを法律化されることには極端に抵抗するし。たとえ社会全体のためになることであっても個人生活を縛る事項に罰則を導入することは、政府も及び腰である。

”個人生活”のシンボルである車に関する典型的な例をあげてみよう。

最近ドイツではガソリンにエタノールを8%以上混合した”エコガソリン”の扱いが問題になっている。環境政策でエコガソリンを導入し、ガソリンスタンドに供給を義務付けたものの、全く売れていないのだ。当然ながら同じガソリンスタンドには通常のガソリンも売っているので、みなそちらを給油する。

アンケートによると拒否の理由は、エコガソリンが自分の車のエンジンを痛めることをドライバーが心配しているからという。しかし、エコガソリンがエンジンを痛める、ないし実際痛めたという実証はない。しかも政府は、ドイツを走る車の95%以上は絶対的にエコガソリンに耐えうると宣伝している。

エコガソリンは政府の環境政策であり、環境政策はドイツの重要国策で、国民も強く支持している。エタノール混合が本当に地球環境のためにベターなのか?という議論は別にすると、自分たちの支持している国策であるエコガソリンの購入を国民が頑なに拒否するというのは、なかなか理解し難い。

しかしこれは”国策”なので、エコガソリンの販売率が一定以下のガソリンスタンドには、エコガソリンを売るべき(=販売率目標)だった量に対し、1リッター辺り10円程度の罰金が課される。このままだと、ほとんどのガソリンスタンドが罰金の対象になる。

業界側は、この罰金は違憲だと主張している。そのうち裁判になり、有名な”憲法裁判所”で判定が下されることになるだろう。

この問題、よく考えると解決策は簡単。国民にエコガソリンの購入を強制する法律を作ればいいだけだ。通常ガソリンの値段を上げて、通常ガソリンを給油すれば自動的に罰金支払となるようにすればいい。

政府は、個人生活に関わることを強制できないという”自由主義”思想と、一方でエコ政策を推進するという”国民の総意”のギャップに悩んだ結果、ガソリンスタンドに罰金を課すという中途半端な間接策を採用しているが、政策としてうまくいっていないことは明白である。

ちなみに、ドイツ人よりは”お上”思考が若干強いフランスでは、政府が「2000年以降製造の車はエコガソリンを入れても大丈夫」という”指針”を出しただけで国民が抵抗感なくエコガソリンを入れるようになったので、一切社会問題にはなっていない。

同じことはドイツの高速道路の速度制限にも当てはまる。

高速運転、特に時速150キロ以上で運転すると燃費が格段に悪くなることは、(欧州では)誰でも経験で知っている。ガソリンの減り方が全然違うからだ。

では、温暖化対策の世界的リーダーと言われる環境先進国のドイツが、世界の先進国で唯一、高速道路の速度制限がないのはなぜだろうか?

ドイツでは90年代に有名な黒い森で酸性雨被害がひどくなり、高速道路に一般制限速度を設けることが何度も政治的に議題に上ったが、そのたびに立ち消えになった。もっとも15年前に比べると、高速道路で100キロ、120キロなどの速度制限のある「区間」は増えた。しかし大半はいまだに無制限のままであり、通行車両の少ないときには200キロ近い速度で飛ばしている人も多い

これはとどのつまり、”個人生活の自由を縛れない”という政府のジレンマなのだろう。俺は、ドイツの速度制限問題はアメリカの銃保持問題と同じだと思っている。何度立法化しようとしても成功せず、原則野放しになっており、どうしても取り締まれない。論理的に考えると矛盾した政策だが・・・

もちろんドイツ政府は、なんとかしたいと思っている。だから、一般的に時速130キロを”推奨制限速度”としており、道路にも青色であちこち表示されている。しかし、130キロで走行している車はほとんどない。なぜなら強制力がないからだ。

だから、もしドイツで原発事故が起きたなら、政府が(法律に依拠せずに)この野菜は安全ですとか水は飲んでいいとかいけないとか発表しても、そんなものを頼りに自分の行動を起こす人は誰もいないと思う。あくまで自分の利益と判断基準に照らして行動するだろう。

社会全体に良いか悪いかは別として、これがドイツ人と日本人の行動の大きな違い。少なくとも自己判断力に勝る部分は、日本人も見習うべきものがあると思う。

お上を信じる日本人、信じないドイツ人(上)

大震災から1ヶ月が経過した。日本をはじめ世界に衝撃が走ったことは疑いようがないが、それでも確実に変わっていないことがある。

それは、日本人のお上信仰。これだけ嘘やゴマカシを繰り返されても、放射能で水も野菜も汚染された国にされても、それでも日本人はお上、つまり政府を信じているのだ。いたぶられても、つばを吐きつけられても、信じ続ける。もうこれは信仰に近いものさえあると感じる。

えっ、日本人は誰も政府を信用していないって? 

・・・それは大きな集団勘違い。日本人(の95%以上)は、今の政府のトップの人間を個人的に信用していないのであって、政府自体を信用していないのではない。

つまり、「政府」という組織が日本のトップに君臨し、政府が国民の最大利益のために物事を指示・決定し、自分はただその流れに従えばいい、という根本的な追従思考は、まだいささかも変わっていない。ずっとそれを信じてきたのに、”なんか最近うまく機能していない”から、精神的にパニックになっている。

学校で叩き込まれた教育では、国民が代表を選び、その代表が政府を作るのだから、政府は国民の利益を守っているとされている。多くの人が、いまだに盲目的にこれを信じている

でも本当の現実は違う。政府というのは一つの組織だ。人間の作った一定以上の規模の組織で、腐敗していないものはない。大会社でも、大NGOでも、政府でも、然り。これらの組織は、自分たちの組織の利益を守るためにしか思考しない。そりゃ、発足当時には違う志の人もいたかもしれないけれど、今ではそれは完全に形骸化している。

嘘と思ったら、今のマスコミやツイッターを見るといい。政府のなんとか氏は信用できないとか、早く辞めろとか、謝罪しろとか、そういう論調が如何に多いか! 要するに、政府の一定の層が入れ替わって、もっと対応が早く誠実な人に替われば、それで済むと思っているわけだ。

でも、それははっきり言って、甘すぎる。誰が入れ替わっても、所詮同じことの繰り返しだ。人間の組織とはそういうものなのだから、腐った根っこは決して変わらない。たとえ革命を起こして政府を入れ替えても、結局同じことだろう。

でも、「政府とは、(国民ではなく)政府の利益を守る組織だ」という単純な真実さえ頭に入れれば、こういう混沌とした情勢で今自分がどういう行動をすべきなのかが、見えてくるはず。

正しいのは・・・自分の脳みそをちゃんと使って、今の状況を分析して判断することだ。簡単にして明晰だけど、誰か(=政府)の言うことに疑念を抱きつつも従って長年生きている間に頭が軟化した日本人にとっては、非常な難題である。

政府の判断とか指示を聞かなくてもいいとは言わない。でもそれは指標の一つにすぎないと割り切ればいい。いろいろな情報を集めて、最後決めるのは自分。もともと自分の人生の責任は、政府になんかない。当たり前のことだけど、日本では大半の人ができていない。

放射能の問題で言うと、政府や自治体が、この県のこの町のこの野菜は安全だの、安全じゃないだの、基準以上だの以下だのと論じている。さらには、原発から何キロまでは避難地域だの、何キロ以上は大丈夫だの、と言っている。

これに対して、「XXキロ以上は安全というが本当か? 不安だ。どうしよう。」 「安全宣言というが、食すには不安。」 という声が多い。

でも、こういう政府の判断基準は、政府内や電力会社やその他のプレイヤーの政治力学の調整の結果、「政府の利益が最大になる最適解」を示したものだ。国民の”利益”は元々関係ない。

それをちゃんと認識していれば、

「政府はXX県のは安全と言っている。あの学者はこう言っている。外国メディアはこう考えているみたい。自分の感覚ではこう感じる。よし、結論としては自分は、XX県だけではなく周囲100キロの食品を避けるようにしよう。

などと判断できる。自己判断だから、政府に対する怨念もなくなって、心穏やかに淡々と暮らせるはずだ。

命に関わる大切なことだけでも、自分で頭を使って考える。流されて生きている人には、大変な意識の変革が必要だ。

もし明日奇跡が起きて放射能流出が止まってくれたら、すごくうれしいことに違いないけれど、残念ながらその”変革”は起こらずに、また翌日から彼らは同じ思考と変わらぬ生活を続けることになるだろう。

だから、もし神のご意思というものがあるならば、日本人が人任せ・政府任せじゃなく自分のものさしでの価値判断と行動がしっかりできるようになるまで、残念ながら放射能の流出は収束しないように感じる。

次回は、日本人と性格が似ていると言われるドイツ人が、如何に政府を信用していないかを論じてみたい。

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