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”海外”は日本の延長なのか!?

ネットの報道記事を見て笑い転げることは少ないが、俺的には久々に大ヒットがあった。 

>時事通信: 政府は26日、東日本大震災や福島第1原発事故に伴う海外での風評被害を払拭(ふっしょく)するため、関係府省などでつくる連絡会議を設置し、首相官邸で初会合を開いた。政府を挙げて安全性をアピールし、「日本ブランド」の再構築を目指すのが狙い。会合では、海外の著名人を起用したPRや、インターネットを通じた外国語での情報発信強化などの提案があった。政府は、まとまった施策から随時実施する方針だ。 

”連絡会議”っていうから、さぞかし学歴も地位も給料も高い方たち、しかも国を代表するような偉い人が大勢集まって雁首を揃えているんでしょ?

それで出てくる結論がこれだというのを見て、もう涙が止まらない位笑ってしまった。

何が面白いのか説明の必要はないと思うけど、まず風評ではなくて実害であることは、120%明確である。

操作されているはずの大手メディアでも、セシウム牛など実害情報が山のように出てきている。子供を中心とする放射能による甲状腺異常や白血球低下などの健康被害は、今や福島や首都圏だけではなく関西でも発生し始めている。それでも根拠なき”風評”だと信じたい、いや、信じなきゃ、という人達の神経の太さには、本当に恐れ入る。

東京が空襲で焼け野原になってもまだ日本が勝つと信じていた人が半分以上いるような国だから、これは別に不思議なことではない。問題は、そういうKYが”平時の”今の日本政府の中枢を占め、決定を下していることだ。

”海外の有名人を使ってアピール”という部分は、もう泣けるほどに日本人的な発想である。確かに日本では、ウケのいいタレント(ないしキャラクター)を使って宣伝すればそれなりに効果がある。元本を使ってしまっている郵便貯金でも、ちゃんと預金が集まる。むしろ、物事の本質など議論しないほうがいい。そういうことは”偉い人”に任せておけばいいからだ。

でも日本の外で、そんな子供だましが通用するはずはない。なぜって? 外人は、自分で考えて自分の基準で物事を判断するから。納得できる説明と実証がないと信用しない。日本の外の世界の人は、誠に残念ながらそんなにアホじゃない。

さらにグッとくるのは、”外国語で情報発信しましょう”という下り。彼らの思考回路はわからないでもない。政府発表以外はガセネタかもしれない。だから正しい情報として政府発表をしているけど、日本語だから伝わっていないと思われる。だから、英語にすれば大丈夫なはず・・・

今どき、放射能垂れ流しの日本政府の発表を信用する外国はないのだから、それを何語に訳しても全部同じことじゃん!! 各国は自分の検査機で独自に検査して、ダメなものは通関させずに送り返すだけだ。

だいたい、ちゃんと信用できる真摯な対応を政府がしているのなら、情報発信など日本語だけで十分なはずだ。日本にいる外国の報道陣で、日本語ができない奴などいない。それじゃ飯を食えないからだ。日本語は使用人口で世界第9位の大言語。堂々と使えばいい。

政府を司る偉い人がたくさん集まって会議を繰り返して、それでもこういうトンチンカンな結論になってしまうのは、”海外は日本の延長”だと考えているからに違いない。彼らは、自分たちは正しい、海外の人も話せばきっとわかってくれる、と思い上がっている。

でも、海外の人を説得したいなら日本人的な思考をしていたのではハナッから全然ダメなんだという根本的事実を認識しない限り、こういうLost in Translation的な禅問答というか、無駄な会議が続くことになる。

お偉方さんたち、いいからもう適当にやめて、早く家に帰って家庭サービスでもしてあげてよ! お母さんたちは泣いています。せめて近くにいて慰めてあげて下さい。それが一番ニッポンのためです。

ぜひ、お願いしま~す ~(^◇^)/    

ベンツ車は高級か!?

先週、1年ちょっと乗っていたリース車を3年のリース期限到来で返却し、3ヶ月のレンタカー契約で別の車に乗り始めた。

”他に乗る人がいない”という理由で、思えばひょんなことから「不本意に」使い始めたBMWの5シリーズだったが、12万キロも走行したから頑張ってくれたと思う。

昨年1月に赴任して初めの3ヶ月間は、余ったVWパサートを使っていた。ところが、会社で唯一BMWを使っていたドイツ人のトップが辞めたため、その車が俺に回ってきたのだ。

しかし当初はこの決定に、ちょっと不満だった。BMWの5シリーズと言えば、日本では車体価格で1000万円になる高級車だけれども、単純に運転するにはあまり実用的ではないのだ。

まずカーナビが使いにくい。携帯電話はBMW専用の機種しか使えない(だから俺はイヤホーンにしていた・・・)。

運転席の横に、カップやコーヒーを置く台がない(後部座席にはある)。

iPhoneなどの音響機器を差し込む場所が後部座席にしかないので、助手席からは非常に操作しにくい。

ハンドルの位置が邪魔になって、運転席から見にくい操作盤がある。

車体が大きい割には、荷物を入れるトランクのスペースが小さい

要するに、後部座席が快適にできていて、運転席の快適さへの思慮が少ないのである。

ひとつひとつは大したことはないようだけど、車の使用頻度が高く年間45,000キロくらいは運転することを考えると、やはり使いやすく実用的な車がいい。

唯一いい点は、高速運転での絶対的な安定性と、3ℓエンジンの加速である。アクセルを全開にしたことは一度もないが、やはり加速はすごいし、220キロ出しても50キロ走行のときと揺れも走り具合も全然変わらない。でも、エンジン性能だけのためにこんな車に乗ることは、自費なら間違ってもやらない 笑

あと、BMWに乗る無視できないデメリットがもうひとつある。それは、社内の人の反応だ。

ドイツはもちろん欧州は車社会であり、車は個人のステータスに直結している。だから、誰がどの車に乗っているのかは、誰もが気にする重要事項となっている。

ドイツでは社会通念として、経営者はベンツかBMW、営業はVWパサートかアウディA4に乗るもの、と決まっている。もっとも最近では、経済危機などもあって営業車をVWゴルフに格下げする会社も出てきているようだ。

しかしドイツ国外ではこの基準は異なる。一般的にイギリスやフランスでは、ドイツよりも若干格下の車を使う傾向がある。だから、他の欧州経営者の車よりも俺の車が断然「上」に見えるため、普通なら、いろいろ影で言われることもある(俺が自分で注文した車じゃなくて前任者の”お古”だから、まだましだった)。

日本から出張者が来る場合には、もっとやっかいだ。日本ではパサートでもすごい車ということになっているし、BMW5シリーズに俺のような立場の人間が社有車として乗っているということは、信じられない贅沢に見えるのだ。

しかしこの議論には、ドイツと日本の社会的な認識の違いをしっかりと把握することが必要である。同じ”車”だからといっても、社会的な位置づけが全く異なる。

日本では白のバンか、軽自動車に毛が生えたような車を営業車として使うことが多い。

日本の営業マンは朝は電車で出社し、朝礼などを終えて、9時になると駐車場に下りて車を取り、得意先へ出かけていく。夕方に会社に戻り、日報など雑務を行って、まだ電車で帰宅する。地域ごとの分担ができているので、走行距離はあまり長くない。

欧州では営業マンは広い領域をカバーすることが多いので、ホームオフィスが一般的だ。会社に行くのは2週間に1日くらいだろう。一日の走行距離も数百キロになる。事務をする日は、一日自宅で集中して行う。

また、欧州のマネージャー以上には、経理などバックオフィスも含め、会社が車をベネフィットとして与えるのが一般的だ。それは個人で使うためであり、週末や休暇にも当然使ってよい。本人のステータスの意味もあるため、ある程度のレベルの車を与える。

国土が狭く、混雑していて高速料金や駐車料金の高い日本の都市圏では、車の利用は最小限にするのが効率的であるし、趣味でもない限り、車に投資などしないほうが賢明だ。しかし地続きの欧州では昔から車でイタリアでもスペインでも行くものであったし、日常でも頑丈な車が必要になる。

そもそもドイツでは、タクシーはもちろん、トラック、消防車、救急車、はてはゴミ収集車まで、ほとんどベンツである。

しかし、本社勤務・欧州勤務両方の長い先輩いわく、

「日本(本社)の人は、ベンツとBWWは、イコール、”高級”だと思っているから、できればやめたほうがいい。CクラスとかEクラスとか、そんなことは関係ないし、相手にそんな知識もない。とにかく避けておいたほうが無難だ。」

・・・まあそれが可能なら結構なんだけど、ここはドイツ。レンタカーでも、オートマ車など一定条件を指定すると、出てくるのはだいたいベンツである。

今回は、ベンツとBMW以外の”無難な”車で、一定条件を満たすものを探すべく、全部のメジャーなレンタカー会社をあたったのだが、やっとあったのがBMW X1.1.8ℓの排気量しかないので100キロから200キロに加速するのに10秒以上かかるが、車内の仕様などは前の車よりはずっと”実用的”だ。

このかわいらしいBMWにとりあえず3ヶ月乗ろうと思っているが、”世間”の反応は如何に!?

金融危機でも絶対確実な投資

日曜日、朝のパンを買いに行ったついでにドイツの日曜新聞Welt am Sonntagを買った。そして、読んですごいショックを受けた

金融危機でも絶対確実な投資”について、1面以上を使って、ストーリー形式で、”本音の意見”が出ていたからだ。言っていることは本当は正論なんだけど、言っちゃあ元もこともないから、あまり表立って新聞に書かれることはない。

大衆紙であるWeltがここまで書くかと驚いたが、これは世の中のパラダイムシフトの表れかも知れない。若干極論だけど、読者も、きっと思考転換の助けになると思う

以下、要約:

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

皆様、はじめまして。あなたはこれから起きる大変動から資産を守る決意をなされました。

私はこれから宝の埋蔵方法を伝授致します。それに関する、非常に困難な道と決断に関してもです。よく聞いて、その通りに静かに実行してください

第1ステップは、あなたの貯金を金(ゴールド)に換えることです。持ち金の全てを金に換えるのは、大きな冒険です。銀行に行き、防犯カメラの前で笑顔を作り、親切そうな相談員に対して正面に向かって、あなたたちとの関係を絶ちたい、ついては全ての口座預金を解約し、全ての有価証券を売却したい、すぐにお願いします、と言ってください。もう一度言います、全財産を、です

あなたたちは誘惑に駆られるでしょう。妥協したいと思うでしょう。全部の卵をひとつの籠にいれるな、ってことわざがありますよね。多面投資はリスク分散になるっていうじゃないですか。

誘惑は大きいけど抵抗しなくてはいけません。国家が長年来の借金漬けから身をふりほどこうとするときのことを考えてみてください。あなたの財産が、もともとそうであったように、単なるカラー印刷した紙切れになってしまう瞬間を。全ては精算されなくてはならないのです。あなたの資産はその前に、国家の手の届かないところに移されなくてはいけないのです。

もちろん相談員は親切ですよ。金ですか、今の時代も時代だ、それはいいですね。それならインデックス連動投資や、原材料ファンドはどうですか? どうしても物理的に金を保有したいというならば、せめて当行の貸し金庫を使ったらどうですか? 保管の手間も省けるし、頑丈で15桁の暗証番号があるから、安全性抜群ですよ、とささやくでしょう。

でも信じてください。”国家債務の精算の日”には、国は銀行から、貸し金庫の所有者の情報を出させます。役人が武装した警備員とともにあなたの家に現れて、貸し金庫まで同行し、まじめな顔で開けろと命令します。彼らは実行権を持っているし、そのために武力を使う権利もある。そして、あなたの資産は全て持っていかれてしまうでしょう。

銀行の親切な相談員とも、お別れの時間です。最後に握手を求められても、応じないでください。

全ての財産を、500ユーロ札(=約6万円、ユーロの最高金額紙幣)で受け取ってください。それを、普通の貴金属店で金に変換するのです。

貴金属店に入ったら、ごめん下さいなどと挨拶は不要です。黙って紙幣をカウンターに並べ、ほしい金貨を指すのです。声を出す必要はない。金に換えるのに、あなたが誰かを知らせる必要などない。ガソリンや卵を買うのと同じです。

これは完全に合法です。ひとつだけ問題があるのは、上限が15,000ユーロ(=180万円)と決まっていることです。これ以上の金額を取引すると、当局に届け出なくてはならない。

解決策は単純です。私たちは誠実が業者をたくさん知っている。あなたのために旅程表を作成しましょう。防弾装備の配達車であなたを銀行でお迎えし、次から次へとドイツ中の店を回ります。あなたの財産にもよりますが、だいたい3週間が目安です。

さて、あなたは当初の予想以上にドイツの見聞を深めました。どこまでも続くアウトバーンの旅とも、武術のトレーニングを受け軽装備のある随行員とも、いよいよお別れの時です。

ホテルへ戻り、あなたの鞄の中を確認してください。思った以上に小さく平たい金貨が、にぶい金色に光っています。もっと多量になるはずだって? それは幻想です。

第2ステップは、隠し場所を探すことです。ものの本では何でも簡単に見える。森の静かな場所、目立つ木、など。でもそれは嘘です。2年もたてば森の様子は変わってしまう。木も根こそぎ倒される。だから宝は永遠に見つからなくなります。

ジレンマはいつも同じこと。目立たない場所でありながら、自分には目立つ場所でなくてはならない。だから、マーク、目印、解読コード、鍵、がキーになります。

誰でもわかる場所に埋めるのは愚の骨頂です。わたしは、金属探知機を持ってそのような場所をかぎまわっている人を知っている。いい生活をしているようです。

あなたは場所の特徴をよくつかんで、いくつかの印をつけ、それをあわせると方向がわかるようにしなくてはならない。印は長期間消えないことが条件です。木よりは石がいいし、石よりは丘がいい。

3つの目印があれば、1センチ刻みで場所の特定ができるはずです。それに暗号をかけるのですが、暗号解読はデジタルではなくアナログな方法でできるようにしてください。数学でも幾何学でも大好きな詩でも、何でもクリエイティブに組み合わせてみてください。

最後は鍵ですが、鍵は隠す必要なんかない。わかりやすい場所に、例えば窓から吊り下げるなどのやりかたで結構です。

これまでのチャレンジには、どちらかと言うと知性が必要だった。これからの時代のチャレンジには、別な能力が必要とされるのです。

宝を深く埋めるためには、あなた一人ではできない。だから協力者が必要です。限定なしで信用できて肉体的にも自信がある方、息子さんか孫がいいと思います。同じ条件なら娘さんでもいい。兄弟は絶対にダメです。妻もやめた方がいい。

もし適した大人の後継者がいないなら、外部からヘルパーを得る必要があります。それにはひとつ問題があるんだけれど、それは後で話します。まずは条件にあう男を探すことで、わたしたちが探してあげてもいいです。若くて体力があって、こういう仕事を喜んでやる人はたくさんいます。問題はそこではありません。

スコップ、つるはし、バケツなどの用品はわたしたちが提供します。一番大事なのは2つの背負い籠。650オンス、20kgの金を2-3キロの距離運べるものです。途中で疲れてしまわないように、必要あらば事前にトレーニングしてください。

隠し場所に着いたら、深さ2.5メートルの穴を掘る必要があります。金属探知機は年々進歩しています。できればもっと深く。2.5メートル以下は絶対にダメです。

背負い籠にはカロリー食と飲み物を入れます。疲労してペースがにぶってはいけません。2時間作業したら、15分休んでください。ここで重要なのは、ヘルパーの男を穴底に立たせることです。彼がバケツに土を入れる、あなたがそれを引き上げる。

ヘルパーとの会話はなるべく避けてください。多くの場合、彼は(外国人なので)ドイツ語が話せないとは思いますが。相手の顔を見るのは避けてください。食事のパックを一緒に開けたり、ましてや分け合うようなことはしないでください。

10時間一緒に作業をして、気持ちが一緒にならないようにするのは大変なことです。彼が堀り、あなたが引き上げる。一定のリズムでの共同の肉体作業なのですから。

というのも、最後にあなたは彼を打ち殺さなくてはならないのです。ほとんどの人にとっては、この部分を実行するのがダントツに最も厳しい。しかもあなたは一人でやらなくてはならない。でも最後にはあなたはシャベルを振り上げ、彼が穴の底でバケツを空にし筋肉が緩んだその瞬間に、後ろ首の一定箇所に振り落とさなくてはならない。わたしたちと練習しておきましょう。

もしあなたが無意識に躊躇した結果、振り下ろし方を緩めてしまったら、きっと彼はまだ意識がある。その場合、もっともっと大変なことになるでしょう。

シャベル攻撃は正しく行えば、彼は一瞬で倒れて死にます。もちろんその後すべきことは、宝を穴に入れてから穴を再び埋めることです。2時間半をみてください。

すべて計画通りなら、東から日が昇りはじめます。あなたは有頂天になっているでしょう。あなたは、この日昇る太陽が特別な意味を持っているように感じるでしょう。そして、これまでにない自由と喜びを感じるでしょう。叫んでください。服を脱いでみて下さい。誰も見ていませんから。

でも、まだ車に戻る過程が残っています。今度はあなたは一人で工具を運ばなくてはならない。喜びを噛み締めているうちなら、きっと平気でしょう。すぐに車を発進させるのは禁物です。今は危険が高い。運転席を引いて、横になって寝てください。

すぐに、深く夢も見ないような長い眠りがやってきます。何日も眠れぬ夜が続いたのですから。8時間、10時間、いや、12時間は眠れると思います。起きた頃には夕方で暗くなっているでしょう。あなたの手足は硬くなり、痛みを覚えているでしょう。

さあ、車を発進させましょう。公道に出て、他の通行車両に混じり、表の世界に戻るのです。加速しましょう。ハンドルを両手で持ちましょう。前方から目を離さないで下さい。そして、深呼吸してください。

あなたは、自由です。

風力発電に反対する人たち

福島原発の影響で、長期的な視野から原発の廃止を検討している国が複数あるが、2022年に全廃すると決めたドイツはその先鋒を行っている。

ドイツの場合は国民のきちんとした性格もあり、何年までに何パーセントの電力需要を原子力以外へ振り替えていくかという、細かな日程表がある。

ドイツの場合、最大の”受け皿”は風力発電である。現在既に電力の7%をまかなっている風力発電を、2020年までに20%にするという野心的な計画なのだ。CO2を出さず、巨大事故も起こさず、地域分散型で巨大設備の要らない風力発電は、エコ革命の理想イメージにもぴったりである。

思い返してみれば、ドイツの風景に風力発電用タービンが混じるようになってきたのは10年ほど前かと思う。その後、優遇策と補助金のおかげでタービンの設置は急激に増えた。

風力発電に適しているのは、言うまでもなく風の強い場所である。また、高ければ高いほど風が強いので、より効率がよい。

ドイツの地形は、ざっくりいうと北に海(バルト海・北海)があり、北半分はほぼ真っ平らであり、中部から南部にかけて谷や丘陵が多く、南部が山岳である。

それゆえ、ドイツの風力発電タービンの大半は北部ないし海沿いに位置している。ドイツ全体では、2万1千台のタービンが稼動しており、1200万世帯の消費量に相当する電力が発電されている。

俺は中南部のハイデルベルクに住んでいるので、日ごろあまりタービンを見ることはない。しかし、タービンの林立する北部では、実は深刻な問題を引き起こしている。

ドイツ人は一般的に田舎が大好きであり、静かな生活を求めて田舎に住み続ける、ないし移り住む人が多い。しかし、せっかくの緑の風景が徐々に発電タービンに”侵食”され、やがて体も蝕まれていくのだ。

タービンの近く(300メートル程度の距離)に住んでいると、風力1で高速道路沿い、風力2で乾燥機の回転中のような音と振動があるのだという。振動数(バイブレーション)で人間が通常知覚できないものでも、長期間浴びせられると体に影響が出てくる。結果として、耳鳴り、睡眠障害、高血圧、心拍障害などになってしまう

休暇などで他の場所に行くと症状は治まり、家に戻ってくるとまた再発するというから、原因は明らかだ。しかし、タービン間ないしタービンと住居間の距離の規定はあいまいであり、隣接する土地の所有者がタービンを建ててしまうと、もう手の打ちようがない

農家にとっては、都会から相当に離れたわずかな土地の貸借権で1タービン当たり18,000 - 20,000ユーロ(=250万円)を受け取れるというのは魅力的である。

これも突き詰めれば、土地の”無制限な”個人所有制度という資本主義の鉄則がもたらす問題だ。

産業革命時の欧州や戦後高度成長時の日本などでは、これ以上にひどい”公害”を、いやというほど経験しているだろう。

ただ今回は、原発を廃止して代替エネルギーを開発しましょうという国の方針の大転換であり、ドイツではエネルギー革命(Energiewende)と呼ばれるほどのものである。一般に、クリーンなエネルギーに変換するんだからポジティブなことだと捉えられているから、風力に反対するという運動は、世間的にやりにくい。

しかし、どんなに素晴らしい革命的な変化でも、犠牲者というのはどうしても出てくる。北ドイツではそれを声に出して活動する人も増えてきたし、欧州22カ国で同じような問題を抱える人達の風力反対ネットワークもできているようだ。

問題は風力だけではない。風力や太陽熱発電などの自然エネルギーは安定供給が難しい。”エネルギー革命”では、高圧送電網や、揚水式発電所、蓄電施設など、かつてない大規模投資が全国で行われる。

森に揚水式発電所を作ると地下水体系が壊れると反対している人もいるし、電磁波が体に悪い高圧送電線などを自宅の近くに作られることに反対している人もいる。

原子力・火力といった従来型発電は一極集中の大規模施設型であり、一般の人の普段の生活が発電プロセスに影響を受けることはなかった。つまり、発電のことを気にせず電力を使えたわけだ

これが”エネルギー革命”で自然エネルギーに転換されると、そうはいかなくなる。発電・送電・蓄電が分散化されるので、プロセスが誰の目にも見えるようになる。つまり、誰もがある程度の犠牲を覚悟しなくてはならなくなる

なんか後ろ向きに聞こえるけれど、これはきっと究極的には、地球環境のためにいいことなのだと思う。

セシウムやプルトニウムを撒き散らさないとか、CO2を排出しないとか、そういう目に見えないことじゃなくて、誰もが発電の代償を目で見て自覚しながら消費する。これによって、”エゴ”じゃない、本当の”エコ”意識が育っていくんじゃないかと、俺は期待している。

デンマークの反乱

デンマークが隣接するドイツ・スウェーデン国境での検問を再開する方針を決めた。国内右翼勢力の台頭し強攻策に出るしかなかったようだ。

理由は、国境を越えた犯罪や違法移民の取り締まり強化であるという。

実は、これはかなり(悪い方向の)”勇気ある決断”であり、悪い兆候である。

国境で検問するのがなぜおかしいの? と感じる方もいると思うので、ちょっとだけ背景を説明しよう。

欧州連合EU加盟国のうち、英国・アイルランドなど数カ国を除く大半の国(下の図の水色の国)は、シェンゲン協定に加入している。

Der Schengen-Raum

シェンゲン協定は、「人・モノの移動の自由」を規定するものである。加盟国間では、まるで国境がないかのように扱われるので、事実上国境撤廃ということだ。2001年から、車や電車、徒歩での出入りは自由であるし、検問所自体が既になくなっており、どこで国境を越えたのかわからないことすら多い。航空機で移動しても、入国審査はない。

これにより、欧州でのビジネスやプライベートでの移動は、相当楽になっている。今でも入国ゲートで車やトラックが列をなすスイス入国などに比較すると、時間的ロスが全くない。

貨物の税関検査などもないから、国境を越えた製造・物流の分業がまるで国内のように可能なのだ。

EU外からの旅行者も恩恵を得ている。観光ビザが必要な国からの旅行者は、シェンゲン内の1つの国からのビザさえあれば、20カ国以上を自由に旅行できるからだ。

デンマークはシェンゲン協定に調印している。本当は、きちんとした入国ゲートを作って検査したかったようだが、それは協定違反だからできない。だから、ギリギリのランダム検査という形にし、常時国境に係官を置き、国境は超スロー走行させ、怪しい車や人を抜き打ちで検査するようだ。

既にフランスやイタリアも違法移民や犯罪防止のため同様の対策を考えているようだが、本当に実行してしまうのはデンマークがさきがけとなる。

俺はデンマークへ車で行ったことはないが、よく行くフランスなどで国境検査が始めるとどうなるかを考えると、かなりぞっとしてくる。

問題は、国境で待たされる時間のロスだけではない。互いの不信感で各国が国境検査を始め、欧州統合の理想モデルに沿って20年以上かけて構築したシェンゲンというせっかくの仕組み自体が根っこから崩れてしまう危険があるのだ。

もともと、不法移民の取り締まりや合法化などのルールや政策が各国政府に委ねられているのに、先に国境を撤廃したことに若干の無理があったのだが、根本論である移民政策を統合するのではなく国境取締りを再導入するという、後ろ向きの解決策になってしまった。

今欧州ではギリシャの債務問題が一番注目されており、ギリシャ議会がコストセーブ案を承認したことでユーロの通貨連合がすぐに崩壊する危機はなくなった、ないし先延ばしになった。

でも、今回のデンマークの反乱は、欧州各国の足並みがまた乱れる原因になる。

今後各国政府とEU委員会がどう出るか、目が離せない。

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