通貨危機は法改正で解決できるか!?
欧州金融危機の発端でもあるギリシャでは資本・資金逃避が続いており、国内から預金がすごい勢いで引き出されているという。通常はユーロ建ての商業契約書でも、「ユーロないしギリシャ政府が将来定める流通通貨」と定める例が出てきているようなので、少なくともギリシャでユーロ使用が終了する日は近づいてきていると思われる。
問題はユーロがどのように終わるかである。ギリシャ・アイルランド・ポルトガルなど市場の集中攻撃を受けている国だけがユーロを離脱するのか? それとも、ユーロという通貨自体がこの世からなくなって各国が旧通貨を導入するのか? 個人的には後者の可能性が高いと読んでいる。
共通通貨ユーロの最大の享受者であり最強の経済力を持つドイツ政府は、「優等生グループ」だけに絞り込んで何としてもユーロを死守することに集中している。財政規律の弱い国を改正EU法で縛りつけて規律を課し、ダメなら罰則、それでもダメならユーロ離脱ないし国家破産をさせる仕組みをちゃんと作ろうというわけだ。切り札とされているユーロ債も、できれば「優等生グループ」だけで作りたいとの発言が出ている。
この考えは実にドイツ的な正論なんだけれども、実際には機能しないと思う。法律を作って縛れば世の中がうまくまとまるというのは順法精神が高い国民の考え方で、法律なんてどうでもいいと思っている人たちや国家もあるということを、ドイツ人はいまだにわからないようだ。規律を最初から守っていればこんな放漫財政にはならない。今だけ良ければいいと思ってカネを使ってきたからそうなったのだ。そのような国民性の人たちにたとえ法律を変えても、何の縛りになるだろうか?
さらに言えば、法律を作ってルールをクリアーにすればいいのだという考えは、こと通貨に関してはもともと根本的に通用しない。通貨とは紙切れに書いた約束事に過ぎず、何の現物資産の裏づけもない。ある通貨を使い続けるのは、その通貨の発行国への信用があるからに過ぎず、その信用は法律事ではなく、あくまで「信用したい気持ち」の集合体に過ぎない。
今のユーロ圏EUには加盟国がユーロを離脱する場合の基準や手続は何も定められていないし、先例もない。でもドイツ政府の主張するように、「この基準に達したら警告、ここまで来たら離脱準備、さらに数条件が満たされたら強制離脱ないし強制国家破産」とクリアーに定めてしまったら、その基準に触れそうな国家が複数あるような危ない通貨として、ユーロという通貨自体が逆に魅力を失うと思う。
しかし、“あいまいだから魅力だ”という感覚がドイツ人にはなかなか伝わらないということも、これまた実によくわかる 笑
ドイツ人は法律は神より絶対的なものだと、心底思っている人が多い。この前、企業年金の破産保険(=会社が破産した際に会社に代わって年金を支払うという保険)をかける必要がある件で、従業員に聞いてみた。
「保険の受け手はコメルツバンク(=ドイツ第2位の都市銀行)で本当にいいの? もうすぐつぶれるかもしれないってしきりに噂されているけれど。別な銀行を検討しようか?」
「いや、コメルツバンクで大丈夫です。法律的には、もし保証者である銀行が倒産したら国家が救済すると書いてあるから平気です。」
「そうだけど、国はそんな法律いつでも変更できるんだよ。」
「・・・」
ドイツからユーロが消える時に初めて、彼らは法律が絶対安全じゃないことを思い知るのかもしれない。
« 超高価な暖房用燃料 | トップページ | 家政婦のプライド »
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 欧州の大寒波(2012.02.05)
- 草食系思考の海外戦略(2012.01.11)
- 通貨危機は法改正で解決できるか!?(2011.12.06)
- 超高価な暖房用燃料(2011.11.30)
- 日本人の美学(2011.11.21)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント